札幌東雁来 黒龍山 東照寺

〒007-0820
札幌市東区東雁来町358-67

真宗三門徒派

第51号平成27年5月

「辛さを転じて・・・」 桜の花が散り、札幌のお踊り公園ではライラックの花が咲き始めました。いよいよ、初夏の香りが漂う季節となりました。 桜もライラックも、北海道の厳しい寒さを経て、必ず春には美しい花を咲かせます。 この美しさは、冬の厳しさをしっかり引き受けて、しっかり大地に根を下ろしてたえるからこそ、色艷やかに私たちを魅了するのです。 私たちは、できることなら、厳しいこと、辛いことを避けて生活したいものです。 けれども、時にはどうしても避けようのない「辛(しん)」を経験することがあります。そんな時は、現実逃避をしたくなるものです。 しかし、「辛」なくして、彩る人生はありえません。人はしんどい時期を体得して人生に深みが増すのです。 辛かったり、苦い経験をするからこそ、幸せな甘さを味わうことが出来ます。 人生には、光と影、表と裏、入口と出口があります。両方あるから人生に彩りの花を咲かすことができるのです。 外観03 「親鸞聖人」は、平安末期の激動の世に生まれ、厳しい世の中を生きる方々に、幸せを導いてくれました。 厳しさの中で美しく咲く花には、太陽、空気、土などが必要なように、人にも縁(えん)というつながりが必要というこを・・・ 先日、札幌の地下鉄で、駅のホームに心肺停止して転落した肩を助けようと、見ず知らずの5人の方が、見事な連携で、その方の 命を救った、というニュースがありました。 転落した方の命と、その場にいた5人の命があったからこそのつながりです。私たちは、多くの人と関わりながら生きています。その関わりは、血を分けた両親や家族、親しい友人というとことにとどまるものではないのです。 私たちの気がつかないところで、すべての命と関わりあい、支えあっています。 私たちは、目に見えない縁によってつながっているのです。私一人ではないのです。私にとって関係のない人なんていません。 そう思える様になると、今まで「踏みつけていた大地」が「支えてくれる大地」だったと心が転じていくのです。 合掌・礼拝も、みんなが幸せになりますように、と念(ねん)じながらすると、自分以外の他の人が、自分のために手を合わせてくれるととになります。 誰かのためにすることで、他の人とつながっていくこともできます。その合掌する心に孤独はありません。 目に見ることの出来ない相手を思いやる気持ち、優しい絆・・・。 「辛」の字に一本文字を足すと、「幸」に転じます。この一本の文字こそ私たちの「合掌の姿」なのです。
平成二十七年 五月 東照寺住職 黒龍巧照